「佐藤紅商店の取り組みはサーキュラーエコノミーだね。」
隣町の高山くんがこう言った。初めて聞いた言葉だったけど調べてみて納得。
サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、従来の「Take(資源を採掘して)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」というリニア(直線)型経済システムのなかで活用されることなく「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組みのことを指します。
横文字にすると大きいスケールの話だが、佐藤紅商店がいつも考えていること。
「廃棄を減らしたい」シンプルなことである。
当店の廃棄の中で、最も大きな割合を占めるのが「柚子のワタ」であった。
昨年は7トンの柚子を仕入れた。
そこから、紅だるまに使う柚子の皮は700キロ。紅てんぐなどに使う柚子果汁は1トン、マーマレードに使う果肉は500キロ。合計2.2トンほどしか使用しない。残りの4.8トンはワタと言われる白皮と果肉の部分である。
柚子の産地、高知や愛媛でもこのワタに頭を悩ませており、大規模な設備にて堆肥化処理をしたり、油を抽出したりと県や組合単位で工夫をしています。
規模の小さい当店。使用量の少ない頃には畑に蒔いて、土にすき込んでいました。しかし、だんだんと使用量が増えて、これじゃあいかんと思う日々。
そんな時目にしたのが、愛媛県でみかんを搾かすを牛の餌にやっているという記事。みかんも食べるなら、柚子も食べるんじゃないかと閃いた。
さっそく、谷向こうにある備中牛を飼育している「江草牧場」そこに頼み込むことにした。
江草くんも興味を持ってくれて、柚子を牛のおやつにあげることが決定した。
そして当日。
車めいいいっぱいに積み込んだ柚子のワタ。
フラフラと谷を降り、えっちらおっちら山を登って、江草牧場に到着。
何が始まるんだと興味津々の牛たち。
「何でも食べるから大丈夫だよ」と江草くん。
いよいよ給餌。
食べなかったらどうしよう。。。
祈るような気持ちで牛を見つめる。
牛たちは心配をよそに少しづつ食べ始めた。
人間が食べると酸っぱい柚子だが、牛たちはどうも感じないらしい。
個体差はあるものの、比較的好んで食べているようだ。
ほっと一安心したが変なものを食べたと、ひっくり返ったらどうしようと別の不安が・・・。
そんな不安を抱えながら帰宅。何事もありませんように・・・。
そして、1週、2週と柚子のワタを運ぶ日々が続き、
牛たちにもある変化が生まれた。
「牛の毛並みが艶っぽくなったのと、牛舎の臭いが減った!」と江草くんは言っていた。間違いなく柚子の効果だと思った。データはないが、牛たちもきっと柚子の香りを嗅いでリラックスしているに違いない。
これまで、当店の悩みの種であった柚子のワタでしたが、牛さんが喜んで食べてくれるオヤツとなり、春には牛さんの糞から作った堆肥を畑に巻くという一つの循環モデルができた。
来年は、備中柚子牛を作ろうという面白い話も生まれている。
廃棄を減らし面白い世の中へ。
当店は、そんなことを意識しながら取り組んでいます。