前回のお話 http://sato-beni.com/2021/04/02/__trashed-2/ 吹屋の紅だるま制作日記 その1
地域の宴会に出てきた赤色の柚子胡椒。その美味しさに感動した私達は、その柚子胡椒を町の特産品にしようと盛り上がった。そして、柚子胡椒を作った方にレシピを聞きにいきました。
翌週、柚子胡椒を分けてもらった隣町の小川さん宅に作り方を教えて欲しいとお願いに行った。
「企業秘密だったらどうしよう・・・」
そんな不安を抱えながらのお願い。
「よくきたねーまぁ上がってご飯でも」と小川さん。
入るとテーブルにはご馳走。そして宴会が始まり、テーブルの上にはあの赤柚子胡椒が出てきた。
「やっぱり美味い!何につけても美味い!」変わらず美味しい味に感動。そして、宴会も終盤に差し掛かり、いよいよ本題。
「この柚子胡椒を吹屋の特産品にしたいので作り方を教えてください!!」
「教えてもいいけど、本当に大変だからねコレは」と小川さんはニコニコしながら教えてくれた。
聞けば九州の友人から教わったというレシピは柚子の薄皮と生の唐辛子、そして塩をバランスよく混ぜ合わせる至ってシンプルな内容だった。
「本当に大変だから、ウチでも誰もやりたがらない。まぁ頑張って」そう言って我々を見送ってくれた小川さん。この時は柚子胡椒作りの本当の大変さなんて知るはずもなかった。
「やった!!これで吹屋の名物ができる!!」
翌日、道の駅に向かう。
11月は収穫時期終盤とあって、わずかに残っていた生の唐辛子を買い占め、吹屋の男達の柚子胡椒作りが始まった。
①まず唐辛子を良く洗い、ヘタを一つ一つ取り除く。
大柄な田舎の男たちが黙々とヘタを取り除く。根気のいる作業だ。30分を過ぎたあたりで沈黙となり、1時間もすれば赤色の唐辛子を持つ手が銀色の缶ビールに変わっていく。
田舎の男たちは燃費が悪い。逆に言えばビールさえあれば何でもできるのである。
飲み飲み作業すること2時間、ようやく唐辛子の下処理が終わった。
②ヘタを取った唐辛子に塩をまぶし、ミキサーにかけてペースト状に
「ガシュ、ゴシュ、ブシュ、ドゥルルルル・・」
普段、バナナやリンゴなど温室育ちのミキサーもまさか唐辛子をブチ込まれるとは思ってなかったろう。案の定うまく回らなかった。
こうなれば力業と異音を放つミキサーの蓋を取り、おたまをグリグリ押し込み、唐辛子をペーストにしていく。気を抜くとミキサーから飛び散る激辛の唐辛子。私は思った。「柚子胡椒は絶対、買ったほうがいい。キッチンでやったら取り返しのつかないことになる。。。」
作業すること2時間。霧状になった辛味成分が催涙ガスのように調理場を覆う頃、ようやく唐辛子ペーストが完成し、男たちは涙を流しながら家路に着いた。
こんなに大変な作業だったとは・・・。小川さんの言葉を思い出しながらお風呂に入る。すると、「あれ?手が痛い!熱い!ヒリヒリする!!」見ると手がマグマの様に赤く熱くなってくるではないか。そう言えば素手でヘタとりをしていた事を思い出した。
熱い、痛い、ヒリヒリする。。。私はオペをする医者のようなスタイルで湯船に浸かりながら、素手での作業を後悔したのであった。
ヒリヒリは布団に入っても治ることなく、朝まで続いた。
続く